今週のお題「爆発」
「芸術は爆発だ」の意味
この言葉を聞いたことがある人はそれなりにいるでしょう。芸術家の故岡本太郎さんの言葉ですね。かつてCMで流れていました。
どういう意味なのでしょうか。
なんとなく分かるようで、でもどういうことか説明してと言われても難しいような。
ぼくは一時期岡本太郎さんの本をよく読んでいました。
きっかけは糸井重里さんのサイト(確かそうだった。もう15年以上前のこと)で紹介されていた「自分の中に毒を持て」という本を読んだことです。
![自分の中に毒を持て【電子書籍】[ 岡本太郎 ] 自分の中に毒を持て【電子書籍】[ 岡本太郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/rakutenkobo-ebooks/cabinet/6801/2000006086801.jpg?_ex=128x128)
- 価格: 737 円
- 楽天で詳細を見る
ぼくが人生で一番病んでいた、精神的にぐちゃぐちゃだった時期です。
この本の中で強烈に残っている言葉の一つは、
「迷ったら危険な方へ行け」
という言葉です。
ぼくは、自分自身がそうやって進んできたこともあり、「やっぱそうだよな」と思っていました。
でも実際はこの時は「危険な方」は選ばずに今に至っています。危険に耐えられないという道もあるし、無謀な選択であることもあるからです。
安全を選ぶことがかっこわるいと思うときもあるし、危険な方を選ぶべき時もありますが、いつもそれが適用されるべきかというとそうではないのです。
ぼくはそこが融通が利かないところでもあって、一つの原理が通用しないこともあるんだということをその時はまだ受け入れられなかったんですね。
まあ、そのことは置いておいて、太郎さんが「危険な方へ行け」と言っているのは、裏を返せば太郎さんには「危険を感じる感性があり」、「怖いと思っている」ということです。
そしてそうとわかってそれに打ち勝つ力を持てということです。
つまり、「恐れを感じる自分」と、「勇気を出して進もうとする自分」とがそこで戦い、その戦いによって爆発が起きるということです。
ぼく自身は「爆発」ではなく、当時「歌は火花だ」と言ったり書いたりしていました。
太郎さんは爆発なので桁が違いますね。
「ファースト(シングル・アルバム)の曲が一番いい」
歌を作り始めて間もなくのころ、ぼくの歌を評価してくれた人の中に、続けて同じようにインパクトのある作品を出せないぼくに対して、こんなことを言ってくれた人がいました。
「SEGEの歌はいいよ。でも、やっぱりファーストに勝てるものはないんだよ。どんなアーティストでもそうなんだよ。」
これは誉め言葉でもあり、とても厳しい言葉でもありました。
「みんなが歩む道だから気にするなよ。がんばって続けろよ。」とも聞こえるし、
「最初はよかったけど、今の曲はそうでもないな。」とも聞こえますよね。
でも、どうしてファーストがいいのでしょうか。
それはやはり「爆発」だからなんです。
大学デビューという言葉を知ってますか。あれもある意味爆発ですよね。
太郎さんの言っている爆発と比べたら本当にカスみたいなもんですけど。
共通しているのは、今までため込んできたものが一気に爆発するということです。
生い立ちや劣等感やコンプレックスなど自分自身への戦いや社会への反抗や。
でも、それが芸術に昇華するには、そこに勇気や覚悟が必要になってきます。人生をかけて、破滅か成功かどちらかわからない暗闇の中へ踏み出す一歩。
人生を俯瞰できるほどの経験もなく、とんでもない間違いかもしれないという恐怖をいだきながらも、「いや、これこそ正しい道だ」「この道を歩まないなら死んだほうがましだ」といった思いを抱え、最終的に2人の自分が対決して爆発が起きる。
人生で最初の爆発だからこそ、もっともため込んできたものが大きく、大きな爆発になり、二度と作れない「ファースト」ができあがります。
何度も爆発は起こせるのか
そのあと、また大きな爆発を起こせるアーティストもいます。
それには、自分と戦い続ける必要があります。
なかなかファーストを越えることはないですが、つきつめて、自分を見つめ続けることで、その大きさ、深さ、暗さがあればあるほど爆発は大きくなります。
またはひたすら盲目的に突き進んで、すっころんで大けがをして這い上がるときも大きな爆発が起きます。
でも、爆発を起こそうと思って簡単に起こせるものではありません。
結局は自分の心の鏡が芸術になっていくのです。爆発の仕方が芸術作品となります。
このぼくも例外ではありません。アーティストはこのことを必ず考えなければいけません。
それと、絵をかく、歌をかく。これはただ色を使う、ただ言葉をならべるという作業ではありません。
人の心に訴える作品には、必ずそれだけの精神性が宿っています。作り手の魂がこもっています。
ただし、精神論だけになってしまっては面白くない作品になります。芸術的な豊かさと精神の豊かさ両方が必要だと思います。
そんなことも全部ひっくるめて、やっぱり爆発します。
現実と理想。世界や社会と自分。技術と精神。過去と未来。恐怖と勇気。冷たさと愛と。
芸術は爆発です。
おしまい
written by SEGE