今週のお題「甘い」
大根は栄養満点はうそ?!現代の食物は世界的に糖分過多だとか
「これ行きたいなあ。どう思う?」
と言いながら奥さんが手にしていたのは、子供が学校でもらってくるワークショップのお知らせでした。
それは小麦を育てるワークショップで、ぼくもやってみたいなと思い、申し込んだら抽選に当たったので娘と2人で行ってきました。
小麦を育てると言っても、ただ小麦を育てるのではなく、特別な種を使います。
現代の作物は、毎年新たに種を購入して栽培している
みなさんご存じでしょうか。基本的に市場に出回っている食べ物は「F1」と言って、1回きりの使い切りの種からできています。
その1回なら前の代と同じ品質なので、整った作物がなるということです。
実った作物からとれた種からも栽培はできなくはないですが、品質がばらけるので、基本的には1回きりです。
なので、現代農家では種を毎回購入しています。
そこに疑問を感じる方も多いでしょう。
「できた種からまた育てるのじゃないの?」と。
「全然SDGsじゃないな。」と。
このワークショップは「SEEDS OF LIFE」という団体が主催しており、在来の種を大切にして育てるということを大切にしています。
今回のワークショップで使う種は、四国で伝統的に栽培されてきた、商業的に作られたのではない種を使います。
なんとなく奥さんの後押しで参加したワークショップでしたが、その話を聞いて「来てよかったー!面白い!」と思いました。
実際に種を植える前に、いろいろと説明を受けます。
日本の在来の野菜は何種類?
その説明の中でまず面白かったのは、「日本の在来の野菜は何種類あるのか?」というお話です。
さあ、何種類でしょうか。
答えは4種類だそうです。
そしてそれは何かというと、わさび、やまいも、うど、せりだそうです。
それ以外はすべて外来ということになります。
現代ではいろいろな作物が日本で栽培され、自生しています。
かつては鳥が種を運ぶ主な担い手でしたが、近代化とともに人の行き来が激しくなり、それとともにいろいろな作物が扱われるようになりました。
人は「おいしい=あまい」を追求して作物を品種改良してきた
次に心に残ったのはトウモロコシの話です。
原種のトウモロコシと現代のトウモロコシの写真を見せられました。
同じものがWikipediaにあったのでのせておきます。
一番上がトウモロコシの原種だそうです。
人間はいろいろかけ合わせて今のようなトウモロコシにしてきました。
人がおいしいと感じる味、食べやすい味に変えてきました。
つまり、「甘く」してきました。
そして甘くすることを繰り返していったことによって、栄養分を比べると現代のトウモロコシは原種の数十分の一になってしまっているそうです。
たとえば大根もそうだと言います。
「この大根甘くておいしい!」
という大根を、「大根は体にいい」と思って食べていても、実は、大根の原種に比べたら栄養分は数十分の一だったりするそうです。
それにそもそも大根て小さかったみたいですよ。
ようするに、甘さを追求し、水分が増し、その分栄養分が減ってしまっているということです。
ちがった見方をすれば、かつては今の数十分の一の大きさの作物で今と同じ栄養分を摂れたともいえるわけです。
また、「甘い」と言えば果物ですが、その果物、最近では人が飼っている動物に与えるのを控え始めているところがあるそうです。
それはかつての果物よりも甘すぎて虫歯や糖尿病になる動物が増えているからだそうです。
このように、世界的に食べ物が「甘すぎ」になっていっています。
人はつい苦い物よりも、すっぱい物よりも甘い物を好みます。
その為に品種を改良し、農薬を使い、化学肥料を使ってきました。
だから、私たちが「健康のためにいい物を食べよう」と考えていることは、実は「何の作物を食べるか」では不十分かもしれません。
たとえば「全粒粉の小麦のパンは体にいい!」「玄米は栄養分が多い!」と単純に思ってたら危険です。
全粒粉とか玄米ということは周りが削られてないということです。
そこには農薬が残っている可能性があります。
なので全粒粉や玄米を食べる場合は、その畑で農薬や化学肥料が使われてないことを確かめた方がいいです。
また、その畑で使っていなくてもとなりの畑で使っていたら影響を受けます。
田んぼなら水も回ってきているかもしれません。
きりがない話かもしれませんし、ぼくもそんなに注意しているわけではないですが。
でも、それが現代の食の現実の一部です。
わたしたちが今食べているものは、それが何の食べ物なのかということ以上に、つきつめていけば、どうやって作られたのか、本当に栄養があるのか、ということまで考える必要があるということです。
アレルギーや現代病が増えているのも、この数十年分かっていなかっただけで、もしかしたらこうした食の問題が背景の一部にあるのではないかと思っています。
麦を育ててみる
「SEEDS OF LIFE」はこうした現代の問題に向き合って、改良が加速する前の在来の種を使って作物を育てる活動をしています。
最近、土と作物に関心が強くなっていたところなのですごく勉強になりました。
さて、説明はともかく作業はどんなだったでしょうか。
持ち物は2Lのペットボトルです。
これにワークショップで用意していただいた石をしき、土を入れて、種をまき、上に枯れ葉をかぶせました。
はじめの説明に退屈していた娘はここは楽しんでやっていました。
面白いことに、小麦だけでなく、そばの種も一緒にまきました。
そばと小麦の種↑
いっしょにまくことで「環境」が整うそうです。
本来作物は放っておいても育つもの
在来の種はとても強いので、ほとんどほっといても育つそうです。
以前沖縄の夢有民牧場ではたらいていた時、「マラバー農場」という、絶版の本に出合いました。
その本によると、作物は健全に育つと虫に食われないそうです。
生態系の中にどこかに欠陥があると、作物が本来の強さを失い、虫に食べられてしまうそうなんです。
当たり前ですが、人間の手が入っていない自然に欠陥はありません。
めちゃめちゃ健康です。だれも種をまかずとも、自分たちで育ちます。
これは植物にも昆虫や微生物にも多様性があり、それが自然に循環というか相互佐用を生んでいるからです。
それができていれば、作物は強くなり、虫に食べられないそうなんです。
こうしたことは最近また注目されてきていますが、このSEEDS OF LIFEの活動にも通じるところがあると思っています。
たとえばワークショップでの種まきでは、種はただばらまくです。
たくさんまいても、種は生きているので自分たちでコミュニケーションしているので、誰が芽を出すか自分たちで決めるそうです。
必要なときに必要な種が活動しはじめるということですね。
そして種はまいた瞬間、土の中の微生物コとミュニケーションをしはじめます。
種は根を出すと根から微生物がほしい栄養を出し、微生物は根に必要な栄養を持ってきます。
そういう人間には見えない相互作用の世界があるんですね。
これが農薬や化学肥料があると断絶します。
そうすると微生物が死にます。つまり土が死にます。
その土で作物を作ると、作物への栄養は年々減っていきます。作物は農薬や化学肥料がないと育たなくなります。
土は年々あせていき、なおさら農薬や化学肥料が必要になり悪循環になっていきます。
まだピンと来ない人もいるかと思いますが、こういった事実に基づいた、本来の生態系にのっとった耕作をする動きはこれからトレンドになりつつあります。
もう一つのトレンドは、「畑は耕してはいけない」というものもありますが、これはまたいつかふれるとします。
さて、SEEDS OF LIFEのワークショップは計3回で、収穫・製粉、調理まで扱ってくれるそうです。
収穫が楽しみです。
おしまい
written by SEGE