今週のお題「読書感想文」
先生「読書感想文を宿題にします。」
自分「えー。何かいたらいいかわからないんだよね。自分の感想書くと『作者の伝えたいことは何か』とか、『そう思ったのはどうしてか?』みたいに書かれる。読んだ人の勝手じゃないの?」
などと思っていた少年である。
本を読むこと自体は、小学生時代では好きレベルで言うと中の下くらいか。
当時は、戦国から明治維新の偉人の伝記か、アルセーヌ・ルパンか、背伸びして「はてしない物語」「ゲド戦記」に手を出して全部読んだふりをしていた気がする。
「ずっこけ三人組」とか「ホームズ」とか、みんなが読むものは読みたくない少年。ファミコンもファミスタはぜったい買わないで、燃えプロ派。ドラクエよりも女神転生。
まあ、それはおいといて。
現在は本が大好きで読み途中の本が常に数冊ある状況だが、20代に旅をしていた時にも本に出合っている。
福岡の中州はうたうたいのメッカと言ってもいい場所で、飲み歩いている人たちとうたうたいが共生しているようなエリア。
飲んでいる人たちは歌ってもらっているという気持ちで気前よくお金を置いて行ってくれるし、うたうたいもそこでたくさん育っていく。
博多や天神はもうちょっと都会的で、有名人を輩出している「照和」というライブハウスがあったり、もっと稼ごう、広げようという気持ちが強いように感じた。
中州のうたうたいは稼ぐというより、毎日道で歌うことが日課で、そこで生活しているという感じ。もう18年くらい前のことだから、今はどうなっているのだろう。
ぼくも中州で計2、3か月は歌っていたと思う。その中で地元のうたうたいとも仲良くしていただき、アパートに居候させてもらったりもていた。
居候させてもらっていたある女の子の歌うたい(ほかの地方に出るのでアパートを空ける)が、一緒に道で歌っていた時にこんなことを言った。
「SEGE君ね、『アルケミスト』って本知りよる?」
「いや、知らないけど。」
「本の名前なんだけど、うちの友達がその『アルケミスト』って言葉を唱えると、不思議ないいことが起きるって言っていて、私も最近読んだんだけど。私も唱えたらいいことが起きるんよ。」
「え?!すごいね。なんて本だっけ?」
「アルケミスト」
「ちょっとメモしておく。」
その時はその話で終わっていたのだけど、数か月後、東京に帰ってきてから別のところでも『アルケミスト』の情報と出会った。それで記憶が蘇り買ってみた。
『アルケミスト』は最近ではロングセラーになっているのか、けっこう有名な本になっている。だから目にしたことのある人も多いのではないかな。当時はまだそれほどでもなかった。
アルケミストは「錬金術師」という意味。宝を探しに旅に出る少年が錬金術師に導かれて人生について学んでいく。話の筋としては、宝を探しにでるが、宝はもともといた場所にあったというもので、その構図は特に珍しいものではない。
もちろんそれ自体、とても意味のあることだし、ぼくも結局東京に戻って生活をすることに価値を置いて今にいたるわけだけども、それよりも、羊飼いの少年が旅の中で出会った言葉がとても深い。
パウロ・コエーリョは『アルケミスト』からはあまり見えてこないが、それ以外の著作を読んでいくと人生の深いテーマについて扱っていることがわかる。魔術を習ったりもしているし、キリスト教の聖地巡礼もしているから、アルケミストからは一見かけはなれているように思うだろう。
でも、『アルケミスト』を読んで、その深さを感じとった人は、ほかの本を読んでもつながりを感じて、なるほどと思うだろうし、より多くを学びとれると思う。
例えばアルケミストでは「前兆にしたがう」という言葉が出てくるが、こうした、こちらがくみ取りにくい知恵に富んだ深い言葉が出てくる。ぼくの記憶に残っている言葉では「一度あることは二度とない。二度あることは三度ある。」という言葉がぱっと思い出される。
これは戦争のことを言っているのか、とか、人生で起こることを言っているのか、とか読み手に考えさせるのだ。
それらの言葉は教訓と言えばいいのか、本の中のサンチャゴ少年にとって大事な知恵なのだというより、読者への「さとし」となっているように思える。
こうした深い学びを平易なあらすじに乗せて表現できるていることが『アルケミスト』の素晴らしいところだし、多くの人に読まれ、ベストセラーになっている理由なのだと思う。
ところで、ぼくには『アルケミスト』を唱えても特に何も起きなかったけど、ほかの作品も気になり、作者のパウロ・コエーリョの作品を今まですべて読んでいる。
彼の作品はファンタジーとしてではなく、現実世界においての非科学的な力について理解がないと面白くないのも確かだと思う。
とても自分のフィーリングにあう本で、当時の彼女(今の奥さん)にもプレゼントしたことがあり、「主人公があなたみたい。」と言われていたほど。
ぼくは、確かにのめりこみました。スペインの巡礼もしてみたくなった。でも、手軽にファンタジーとしても読める本でもあるので、ぼくの中では、おすすめの本として友達にあげたり、若者にあげたりする本の1冊になっている。
ぜひ、読んでみてください。
おしまい
『アルケミスト』に出会ったいきさつについて、旅小説で詳しく書いてます↓