今週のお題「最近見た映画」
家庭持ちで映画ってなかなか見れないけど「万引き家族」
映画なんて見る時間がなかったここ10年くらい。
特に子供ができてからは、一人で悠長に映画なんてみる時間がない。
ぼくは仕事と家族の時間以外何をしているかというと、主に読書と音楽です。
特に音楽は最優先なので時間ができたらスタジオに行きます。家族を置いて一人でやらせてもらっているのは、唯一音楽です。
だからそれ以外に映画も観させて、というのはなかなか難しいです。
それと、映画は好きですが、2時間も拘束されるわりに役立つ情報はあまり多くありません。
「効率」ということを考えると優先順位が下がります。
でも、映画は深く考えさせるテーマを投げかけてくれたり、心を豊かにしてくれたりします。
20代前半、「グッド ウィル ハンティング」という映画にぼくは号泣し、心が救われました。
その中で、ロビン・ウィリアムスがマッド・デイモンに「君のせいじゃない」と言葉を投げかけたシーンに嗚咽しました。
自分を責めてばかりのぼくの心に響いたんだと思います。
だから映画の力はよくわかっています。
40代になり、2年くらい前からは「映画もみていかなくてはなあ」と思いはじめました。
当時ものすごい話題だった「ボヘミアンラプソディ」を観ましたが、一人で映画なんてそれこそ20年以上なかったことです。
それほど家族をおいて一人で映画を観に行くというのは何とも罪悪感のいることだったんです。
そんなこんなしていると去年くらいから「映画見ないの?!」と驚かれたり、映画をよく見る人に出会ったりしてなおさら映画の需要が高まりました。
映画を見る時間を作るために
じゃあ、どうやって時間を捻出するか。
通勤は自転車なので乗り物の中で観るということはできません。
ぼくは職場で仕事が終わりきらない職種なので、どうしても持ち帰って家で仕事をします。
今までは録画していたTVを観ながら仕事をしていることが多かったですが、そこに映画を入れてみました。
music.jpでレンタルした映画をタブレットで観ながら仕事。
観ながらというか横で流しながらというか。
かつては映画を観るとなると1秒1句もらさず観たいという感じでした。だからこそなかなかタブレットで観ながらという発想にならなかったと思います。
そういう性格なんですね。でもその壁を思い切ってとっぱらってみました。
そのかわり、2時間くらいかかる仕事をしながらでないと映画の時間があまってしまうので、それなりのボリュームの仕事があるときにやっています。
これで今年は14本観ています。
まあ、多くはないですが、やはり本の方がウェイトが高いので。
ちなみに本は今年は1年で100冊を目標にしているので、隙間さえあれば読書です。
今94冊なので達成できそうです。
本も映画もそうですが、携帯端末があることでとても効率的に読んだり観れたりします。
本はリアルの本が基本ですが、いつでもどこでも読めるようの本を必ず携帯に常備しています。
映画は特にリアルで観る時間はとれないのでほとんどがネット上でレンタルです。
しかもmusic.jpならプラン内なら動画代はかかりません。
子供たちが映画を観るようになってきたのも映画を観る追い風になっています。
万引き家族
「万引き家族」は出会う人出会う人が「もう観た?」「いいよ!」「まだ観てないの?」と言ってきたし、自分でも気になっていた映画です。
それでずいぶん公開されてから経ちますが、最近ようやく観ました。
これは「愛」がテーマの映画です。もう少し言葉を加えれば「愛されなかった人々」を描いている映画です。
現代社会にとってとても大切な映画だと言ってもいいと思います。
それは今の社会における弱者、社会の闇に目が向けられているからです。
ちなみに、万引きなどの犯罪を肯定する映画ではありません。ルパン3世のように泥棒側をヒーローにする映画でもないです。
また、権力には結局は逆らえないということや、悪いことをした人には必ず最後は罰が下る、ということを伝える映画でもないです。
そうとらえているなら間違えていると思います。もしそうならこの映画を作る必要はないでしょう。
この映画はやはり「愛されなかった人々」を描くことで、愛とは何か、愛が足りないことはどんなことを引き起こすのかということを考えさせられる映画です。
最後に尋問する警察官の描写を観ていると、警察官たちは信代や祥太たちのことを全く理解していないように見えます。
信代(安藤さくら)の受け答えに対する警察官(池脇千鶴)の反応に、みなさんもどかしさを感じませんでしたか?
むしろ警察官たちが陳腐に見えるような感じです。
そしてそこに社会がこうした人たちに向ける不理解が凝縮されているようにも思えました。
祥太がつかまることで万引き家族の闇の部分が明るみになり、視聴者にとっても「そうな黒い歴史があったの?」となったと思います。
ここの受け取り方で分かれると思います。
ぼくには、同時にそこにも実は愛が存在していて、むしろ「悲しみ」を感じました。
信代の警察官への返答は、言い訳ではなく、おばあちゃんを拾ったのもリンを拾ったのもぼくには善意なんじゃないかと思えます。
でも、信代自身が抱える心の傷が犯罪になる形でしかそれを解決できなかったということです。
考えてみると万引き家族はみんなが心に傷を抱えています。
初枝…独居老人だった。息子夫婦と絶縁。
信代…幼いころ心の傷を負っているようだ。リンのことを「親に愛されていない子はあんなに人にやさしくできないもんだけどねえ」と言っていたり、腕にリストカットの跡がある。
治…信代が上のくだりを治に語るということは、治もそれを理解できるような境遇であると想像できる。
祥太…本当の親の愛を知らない。それは治が連れ去ったからだと思うけど。
亜紀…実の親から妹と比較され、差別的に育てられる。
りん…親から虐待を受けている。
りんに対しては法的には誘拐という犯罪を犯しているけども、視聴者にとってはその気持ちはわかるだろう。
虐待の家族に戻していいものかと。
ここに信代の愛があるわけだけど、この解決法でいいのか?というのがもう一つの視聴者の気持ちになる。
「この解決法でいいのか?」ということを思わせるもう一つの象徴的なシーンは、初枝を家の床に埋めるところだと思います。
この「万引き家族」はそういった「この解決法でいいの?」と思うことがたくさんあります。
そこに大きな意味があるとぼくは感じます。
その背景には、まっとうに教育を受けてきていないということがあるのではないでしょうか?
あまりに短絡的。あまりに無思慮。非言語的。
そこにかなしさを感じます。
信代と治が殺人を犯していたことも関係していると思います。
そして教育をまっとうに受けられない人というのは、今の社会でどういった人々をさすのでしょうか?
おそらくまっとうな親の愛を受けていないと思います。
でも、そうした人々の中にも愛情というものがあり、それがからまわりしているかなしさ。
ただ、亜紀だけは少し違います。彼女はまっとうな教育を受けているからです。
警察からの尋問のシーンを見ると、彼女の反応は万引き家族に対して肯定的ではないようでした。
実際彼女がいろいろと警察にしゃべったようです。とは言っても後で家を見に行くシーンがあり、何が大切か彼女の中で葛藤があるようでもあります。
また、りんもおそらく教育はまっとうにうけられるのではないでしょうか。でも彼女は虐待を受け続けるでしょう。
ここは、血のつながった家族がすべてよいわけではないということを投げかけています。
そこに愛がないなら、愛のある他人の方がいいだろう、と。
りんほどの虐待は受けていないであろう亜紀とりんの比較というのも考えさせられます。
亜紀がもっとひどい扱いを受けていたら、万引き家族に対してもっとちがった受け止め方をしたかもしれません。
さて、「愛」をテーマにということでしたが万引き家族の中に「愛」はあったのでしょうか、なかったのでしょうか。
ぼくはあったと思います。
「愛」というものは「愛されたことのある人が人を愛することができる」とぼくは思っています。
祥太は治にうらぎられはしますが、治から受けたものの中にきっと愛を感じていると思います。
彼は彼自身の正義感の強さというものもあるけども、やはり治から受けたものをすべて否定することはできないでしょう。
治は「父ちゃんといってくれ」と言っているように愛に飢えていました。きっと治自身が父の愛に飢えていたんだと思います。
だからこらえきれずに祥太を捨てようとしたのかもしれません。
でもバスで祥太を追いかけるシーンは、本当に大切なものを失うということを知り、それに気づいたシーンです。
あの治の姿は祥太の心に残るでしょう。
また、りんは元の家族の中にいたときには知らなかった人々のぬくもりを万引き家族で知ることができました。
それは今後虐待が続く中で、希望にもなり、比較対象ができたことでつらさにもなりえます。
でも、愛はうけとったら消えることはありません。もしも万引き家族に出会わなかったらその後のりんはどうなっていたでしょうか。
そう考えると僕には希望の方が勝るのだと思います。
近年虐待が多くなっています。日本でも貧困が問題になっています。
そういった現代日本を考える上で、とても大切な映画だと思います。
以上「万引き家族」を観た感想です。まだの方、ぜひ観てみましょう。
おしまい
written by SEGE
今週のお題「最近見た映画」
愛について
ジャッキーチェン
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