自分でなおす!物も体も心も!

素人が何でも自分で直す・治す記録。日常で壊れる物、痛む体、悪い癖、物も体も心もなおす小ネタから専門的なことまで。直らない時もあるけど。それも含めてぜひご自分の生活に活かしてください。written by SEGE

ぼくの育った家はもうない【詩】

今週のお題「私の実家」

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昔はよく詩をブログにのせていました。

 

久々に詩をアップします。

 

ぼくの育った家はもうない


ぼくの育った家はもうない

 

ぼくの育った家は壊されちゃった

 

ぼくの育った家は重機で大きく削られ

 

まるで舞台のセットみたいに外から中が丸見えだった

 

そんな風に部屋の中が見えるなんてことは

 

ありえないことだったけど

 

そのありえない状態になっていて

 

それは解体屋にとってはごく当たり前の光景だった

 

 

ぼくの育った家はもうない

 

でもぼくの頭の中には

 

まだぼくの育った家がある

 

板張りの居間の、その板の触った感じ

 

壁紙のざらざらした感じ

 

階段の壁に埋め込まれた黄色く段差のついた特別なガラスの触り心地

 

玄関のひんやりとしたしめった匂い

 

庭の石畳やレンガとそのすき間に生えている草

 

傷んだ壁や屋根を補修したこと

 

家の中、家の外の全ての場所を、ぼくは頭の中で再現できる

 

 

庭にラジコンのコースを作って、兄と遊んだこと

 

庭に昔犬を2匹かっていたこと

 

階段の柵に頭をはさんで抜けなくなったこと

 

食事を作っている母に小言を言われ、足を蹴って怒られ、罪悪感を抱いたこと

 

親父に言われたことにむしゃくしゃして、トイレの扉を殴ってへこんだままだったこと

 

ぼくが歩んだ全てがそこにある

 

 

そしてぼくの育った家はもうない

 

もう二度とあの家で生活することはできない

 

もう二度とあの感触を取り戻すことはできない

 

そう思うと胸がうずくんです

 

 

でも、はっと気づく

 

母は、誰よりもその胸の痛みを抱えているのだと

 

母は、家が壊される姿をついに見に来ることはなかった

 

母の40年間の戦いがそこにすべて刻まれていたのだから

 

「わたしは見に行きたくない」

 

と言っていた

 

だから、更地になって初めて見に来た

 

「本当にないのね。あの階段の黄色いガラス。あれだけは残しておきたかった。」

 

と言っていた。

 

そこに今新しい家が建っている

 

家も土地も小さくなったが

 

母の新しい生活がそこで始まっている

 

 

でも、もう二度と戻ってはこない

 

ぼくの育った家はもうない

 

もう二度とあの家で生活することはできない

 

もう二度とあの感触を取り戻すことはできない

 

そう思うと胸がうずくんです

 

ただ、確かにぼくの中に、今でもあの家のすべてが残っています

 

 

おしまい

 

written by SEGE