言葉は心の薬【彼女に靴を買ってあげなさい】
対象:自分の心
症状:自分のことで精いっぱい
物語:
人生の進路に悩んでいた20代真ん中ごろ。
兄の整骨院で働かせてもらっていた時です。
ぼくはそのころ歌うたいの放浪の旅を終え、地元東京に戻っていました。
工事現場で働いたり、介護の免許をとって介護施設で働いたり、ライブ活動をしながら、でもこの先どうしていいかわからずにいました。
その後、音楽とは一線をひいて距離を置き、今の仕事に就くための勉強をしようと決めました。
同時に兄が「その間うちの整骨院で手伝ってほしい」と声をかけてくれたのです。
でもぼくは心にふんぎりがつかず、まだ「本当にこれでいいのか。」「ちがう道はないのか?」などと迷いと不安でいっぱいでした。
時間だけはいたずらに過ぎていく。
そしてぼくはパニック障害になっていました。パニック障害を治す【決心をする】①
さて、当時ぼくには5年以上つきあっていた彼女がいました。
ぼくが旅に出た後も関係を切らずに待っていてくれた彼女。
東京に戻っても交際は続いていました。
当時、彼女はぼくのことをどう思っていたのでしょうか?
ぼくは自分のことばかり考えていて、デートは夜一緒に飲んだり、ぼくの交友関係につき合わせて、イベントなどにでかけたりするくらいのもの。
お金もろくにない。音楽をやっていながらも不安や迷いをこぼしながら、かといって何も進んでいない。どこにも向かっていない。
その音楽もやめて、新しい資格をとるという。とは言っても日に日に情緒不安定になる。
うつうつとしているしイライラしている。
彼女にやさしくしてあげるどころか、自分を保つことでせいいっぱい。
一緒にいた彼女はとても不安だっただろうし、不満だったと思います。悲しかったと思います。
彼女も決してお金があるわけでなく、介護の仕事につきたてだったし、いつまでこういう暮らしが続くのか、一人暮らしもしんどかったでしょう。
そんなある日、彼女が腰を痛めました。それでうちの治療院に連れてきたのです。
兄が鍼をうってくれました。
その時に兄はぼくにこう言ったのです。
「彼女に靴を買ってあげなさい。」
ぼくはそう言われて、ものすごく恥ずかしくなりました。
彼女のワンスターのスニーカーは、彼女はとても大好きでしたし、レアなワンスターだったので履き替えるつもりはなかったかもしれません。
でも履きつぶされてけっしてきれいとは言えない状態でした。
兄は靴を見て多くを悟ったんだと思います。
彼女のつらさ、ぼくが彼女を大事にしていないこと、ぼくがそういった配慮ができていないこと。
または「好きで履いているんだし、むしろ味があっていいじゃない?」とぼくが言い訳として思っているんじゃないかということ。
兄の言った通りでした。
ぼくは自分のことばかり考えていて、彼女のことを大事に考えていなかったんです。
なんて心がせまいのか。
兄がその一年前に、
「おまえはこのままでいいのか。彼女をどうするのか。」
とぼくに迫ったことがありました。
兄はとても男気を大事にする人なんだと思います。男として女性を大事にする心。
ぼくは、
(自分のことばかり考えている自分はなんて小さいんだ。彼女のために生きよう。)
と思うことができました。
そして「結婚」ということを考えるようになります。
ちゃんとけじめをつけよう。落とし前をつけよう。
結婚を前提に付き合いを続けようと。
そうすることで彼女も、そのご家族も、ぼくの家族も安心する。
ぼくにも目標ができる。
そんな中さらに「靴を買ってあげなさい」と言われたのです。
要するにぼくはまだ変わっていませんでした。
かなしかったです。自分が。
結局彼女はぼくから離れていってしまいました。
当然です。無理もないです。
でも、あの時兄に言われた言葉によって、ぼくは女性の気持ちを大切にするということを学びました。
彼女は言わなかったけれども新しい靴がほしかったかもしれません。
もし買ってあげると言っても「いいよ。無理しないで。」と答えたかもしれないけど、心の中ではうれしかったかもしれません。
それでも「いいから買ってあげる。」と言える方がいいこともあります。
表向きは断っても本心ではほしい場合もあるからです。
そういう心の機微が宿った瞬間でした。
そしてその次にお付き合いしたのが今の奥さんです。
前の彼女に果たせなかった思いやりを今の奥さんには存分に注ぐことができました。
そしてその言葉からもう一つ学んだことがあります。
「身に着けるものはその人を表す」
ということです。
考え方、経済状態、人間関係、など服装は様々なことを表現しているのです。
だからそれに応じた運勢、人間関係を引き付けるのだと思っています。
まとめです。
自分だけでなく、自分の大切な人の服装にも気を配ってあげよう。そして服装がその人の中身を表現しているのだということに気づこう。
おしまい
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ご拝読ありがとうございました。